❝痙縮❞
今回の記事では、この言葉について学びましょう。
まず脳卒中の病状の中に筋肉が強張ってしまい運動を妨げる非常にやっかいな後遺症があり、これを痙縮(spasticity)と呼びます。
どのように厄介かというと、
指に力が入り過ぎて指が伸びずコップを持てない、持てても離せない、箸が持てない、小豆大のものが摘まめない、指同士を別々に動かせない。
足先がつま先立ちのような方向且つ、内側に捻った位置で固まることで、地に足裏全体がつかない、支えられない、捻挫する、躓く。
などなど
手先と足先だけでもたくさんの問題が生じるのです。
そしたら次は、この問題がなぜ起こるのか、という疑問が出てきますよね?
痙縮発現のメカニズムは、2005年にアメリカの医学雑誌Muscle and Nerveで興味深い論文が掲載されています。
(上図の参考文献:J.-M. Gracies, “Pathophysiology of spastic paresis. ” Muscle and Nerve, vol. 31, no. 5, pp. 535–551, 2005.)
この報告によると、痙縮が発生する3つの機序があります。
脳がダメージを受けることで、神経系と軟部組織への2つの影響が生じます。
1つ目は、脳神経の損傷により思うように身体が動かせなくなります。
2つ目は、環境的に麻痺肢が動かされないことで、関節周囲の組織が線維化(=拘縮)を引き起こします。
加えて3つ目の機序は中枢神経系の再配列によって、筋肉が伸ばされることに対する収縮反応(=相動性伸張反射)が過敏で、筋が過活動の状態となります。
筋拘縮と筋過活動は、双方向性に悪影響を持つ関係になっています。
難しい話になりましたが、回復を進めるうえで注目すべきは、
痙縮のメカニズムの中心になっているのが何なのか。
筋拘縮と筋過活動の両方に影響している要因、
それはズバリ、麻痺肢の❝Disuse(不使用)❞です。
Disuse改善が拘縮、筋過活動、ひいては痙縮改善に繋がる理由や
対処するうえでのポイントを、次の記事で紹介いたします。