最も頻度の高い症状は片麻痺と言われる運動麻痺です。
脳を病巣とする麻痺は末梢神経麻痺とは大きく異なり、大脳皮質を中心とする複雑な上位運動制御のコントロールが障害されて、脊髄の下位運動中枢が異常な運動パターンを示すことが特徴です。
脳卒中直後の麻痺は筋のもつ本来の緊張感を失った弛緩性の麻痺を呈します。
例えるなら、肉屋で購入した鶏肉のように張りのない状態を思い浮かべてみてもらえるとイメージしやすいでしょう。
重度の方ほどこの状態から緊張感が回復せず、力が発揮できません。
早い人では数日から数週間を経過するうちに緊張感が増し、緊張感が過剰に亢進した痙性麻痺を示すようになります。
この状態は力を抜くことが難しく、身体がこわばってしまい、関節可動域制限や痛みが生じることがしばしばあります。
この段階では運動全体が粗大であり、目的に応じた細かな力の調整が苦手です。
力の入れ方や運動方向について適切なフィードバックを受けながら合目的的な運動を反復する必要があります。
このように、脳卒中においては、その時期毎に症状が変化するため、状態に応じて治療方針を修正していかなければならないのです。